1 さて、イエスは聖霊に満ちてヨルダン川から帰り、 [1] [2] [3] [4]
2 荒野を四十日のあいだ御霊にひきまわされて、悪魔の試みにあわれた。そのあいだ何も食べず、その日数がつきると、空腹になられた。 [5] [6] [7]
3 そこで悪魔が言った、「もしあなたが神の子であるなら、この石に、パンになれと命じてごらんなさい」。 [8] [9]
4 イエスは答えて言われた、「『人はパンだけで生きるものではない』と書いてある」。 [10]
5 それから、悪魔はイエスを高い所へ連れて行き、またたくまに世界のすべての国々を見せて [11]
6 言った、「これらの国々の権威と栄華とをみんな、あなたにあげましょう。それらはわたしに任せられていて、だれでも好きな人にあげてよいのですから。
7 それで、もしあなたがわたしの前にひざまずくなら、これを全部あなたのものにしてあげましょう」。
8 イエスは答えて言われた、「『主なるあなたの神を拝し、ただ神にのみ仕えよ』と書いてある」。 [12]
9 それから悪魔はイエスをエルサレムに連れて行き、宮の頂上に立たせて言った、「もしあなたが神の子であるなら、ここから下へ飛びおりてごらんなさい。 [13]
10 『神はあなたのために、御使たちに命じてあなたを守らせるであろう』とあり、
11 また、『あなたの足が石に打ちつけられないように、彼らはあなたを手でささえるであろう』とも書いてあります」。
12 イエスは答えて言われた、「『主なるあなたの神を試みてはならない』と言われている」。
13 悪魔はあらゆる試みをしつくして、一時イエスを離れた。 [14]
14 それからイエスは御霊の力に満ちあふれてガリラヤへ帰られると、そのうわさがその地方全体にひろまった。 [15]
15 イエスは諸会堂で教え、みんなの者から尊敬をお受けになった。
16 それからお育ちになったナザレに行き、安息日にいつものように会堂にはいり、聖書を朗読しようとして立たれた。 [16] [17] [18]
17 すると預言者イザヤの書が手渡されたので、その書を開いて、こう書いてある所を出された、 [19] [20]
18 「主の御霊がわたしに宿っている。貧しい人々に福音を宣べ伝えさせるために、わたしを聖別してくださったからである。主はわたしをつかわして、囚人が解放され、盲人の目が開かれることを告げ知らせ、打ちひしがれている者に自由を得させ、 [21]
19 主のめぐみの年を告げ知らせるのである」。
20 イエスは聖書を巻いて係りの者に返し、席に着かれると、会堂にいるみんなの者の目がイエスに注がれた。 [22]
21 そこでイエスは、「この聖句は、あなたがたが耳にしたこの日に成就した」と説きはじめられた。 [23]
22 すると、彼らはみなイエスをほめ、またその口から出て来るめぐみの言葉に感嘆して言った、「この人はヨセフの子ではないか」。 [24] [25]
23 そこで彼らに言われた、「あなたがたは、きっと『医者よ、自分自身をいやせ』ということわざを引いて、カペナウムで行われたと聞いていた事を、あなたの郷里のこの地でもしてくれ、と言うであろう」。
24 それから言われた、「よく言っておく。預言者は、自分の郷里では歓迎されないものである。 [26]
25 よく聞いておきなさい。エリヤの時代に、三年六か月にわたって天が閉じ、イスラエル全土に大ききんがあった際、そこには多くのやもめがいたのに、
26 エリヤはそのうちのだれにもつかわされないで、ただシドンのサレプタにいるひとりのやもめにだけつかわされた。
27 また預言者エリシャの時代に、イスラエルには多くのらい病人がいたのに、そのうちのひとりもきよめられないで、ただシリヤのナアマンだけがきよめられた」。
28 会堂にいた者たちはこれを聞いて、みな憤りに満ち、 [27]
29 立ち上がってイエスを町の外へ追い出し、その町が建っている丘のがけまでひっぱって行って、突き落そうとした。
30 しかし、イエスは彼らのまん中を通り抜けて、去って行かれた。
31 それから、イエスはガリラヤの町カペナウムに下って行かれた。そして安息日になると、人々をお教えになったが、 [28] [29]
32 その言葉に権威があったので、彼らはその教に驚いた。
33 すると、汚れた悪霊につかれた人が会堂にいて、大声で叫び出した、 [30]
34 「ああ、ナザレのイエスよ、あなたはわたしたちとなんの係わりがあるのです。わたしたちを滅ぼしにこられたのですか。あなたがどなたであるか、わかっています。神の聖者です」。
35 イエスはこれをしかって、「黙れ、この人から出て行け」と言われた。すると悪霊は彼を人なかに投げ倒し、傷は負わせずに、その人から出て行った。
36 みんなの者は驚いて、互に語り合って言った、「これは、いったい、なんという言葉だろう。権威と力とをもって汚れた霊に命じられると、彼らは出て行くのだ」。 [31]
37 こうしてイエスの評判が、その地方のいたる所にひろまっていった。
38 イエスは会堂を出てシモンの家におはいりになった。ところがシモンのしゅうとめが高い熱を病んでいたので、人々は彼女のためにイエスにお願いした。 [32] [33]
39 そこで、イエスはそのまくらもとに立って、熱が引くように命じられると、熱は引き、女はすぐに起き上がって、彼らをもてなした。
40 日が暮れると、いろいろな病気になやむ者をかかえている人々が、皆それをイエスのところに連れてきたので、そのひとりびとりに手を置いて、おいやしになった。 [34] [35]
41 悪霊も「あなたこそ神の子です」と叫びながら多くの人々から出ていった。しかし、イエスは彼らを戒めて、物を言うことをお許しにならなかった。彼らがイエスはキリストだと知っていたからである。 [36]
42 夜が明けると、イエスは寂しい所へ出て行かれたが、群衆が捜しまわって、みもとに集まり、自分たちから離れて行かれないようにと、引き止めた。 [37] [38]
43 しかしイエスは、「わたしは、ほかの町々にも神の国の福音を宣べ伝えねばならない。自分はそのためにつかわされたのである」と言われた。 [39]
44 そして、ユダヤの諸会堂で教を説かれた。 [40]